名古屋駅からJR中央線で約35分、崖っぷちの秘境駅で知られる「定光寺駅」。
普段は無人駅で閑散としていますが、今日はとても賑わっていました。普段はいない駅員さんが2人もいて列車と乗客をさばいています。
国の登録文化財日本3大廃線トンネル群の1つである愛岐トンネル群の秋の特別公開が行われているからです。
一般公開は春と秋に行われています。
ちなみに日本3大廃線トンネル群とは
愛岐トンネル群
のことをいいます。
愛岐トンネル群とは?
1900年(明治33)国鉄中央線は名古屋〜多治見間が開通しました。
東濃の檜などの良質な木材や陶器が名古屋へ運ばれました。
殖産産業が急務の時代、木材は車両製造(日本車両など)や自動織機(豊田自動織機など)に、陶土はノリタケを代表とする日本陶器として海外輸出され、「ものづくり中部」の原型を形作りました。
以降戦後の高度成長期まで経済発展の大動脈として中部地方の発展と近代化に大きく寄与しました。
その線路も戦後の高速大量輸送時代に対応できなくなり、新線が建設されて高蔵寺〜多治見間の8km余りの線路と13基のトンネル群は1966年(昭和40)に廃線になり、茂った籔の中に埋もれて忘れ去られていました。
トンネル発見のきっかけは2005年(平成17)に春日井市内のJR勝川駅高架化改修工事でした。
勝川駅は、明治期の鉄道開業からの赤煉瓦の土台のプラットホームが残っていて、改修を機に駅舎とともに土台が撤去されることになりました。
廃棄される赤煉瓦を使って駅前再開発のモニュメントをつくる町おこしイベントが行われました。
昔をよく知る人からの赤煉瓦は市内の煉瓦のトンネルに残っているはずだという一言により、「愛岐トンネル群」の存在が明らかになりました。
2007年(平成19)市民グループが発掘と調査を開始し、2009年(平成21)NPO法人化。
2016年(平成28)登録有形文化財に認定されました。
愛岐トンネル群の秋の一般公開での散策
片道1.7km、往復3.4km、旧国鉄中央線3号〜6号トンネルと廃線跡地を歩きます。
トンネル群入り口には赤煉瓦のモニュメントが設置されています。
入口で入場料100円(小学生以下無料)を払います。
3号始発駅
3号トンネル:76m
トンネルに実物大のSLが描かれた大幕が垂れ下がり、中はどんな風になっているのかなとワクワク感をそそります。
中に入るとライトアップされていました。
竹林駅
竹林広場
子供が喜びそうな仕掛けが手作りされていました。
道中は紅葉が美しいです。
4号トンネル:76m
3分に1回、SLの通過音と汽笛が楽しめます。
トンネルの壁や天井にはススが残り蒸気機関車が走っていたと感じられます。
大モミジ前駅
推定樹齢100年前後の大もみじがありました。
渓谷の紅葉が美しいです。
水車前駅
水車は3代目だそうです。水の流れで回転していました。
イケメンゴリラシャバーニ似の岩です。
幸福の鐘を鳴らせます。
道中にはブランコ、木琴など子供も楽しめるよう工夫されています。
娘は木琴が気に入ってしばらく遊んでいました。
中継信号機・継電器箱台座跡
これらは列車の安全運航に欠かせないものでした。
マルシェ駅
マルシェ広場ではお弁当や飲み物、おまんじゅう、絵葉書が売られていました。
休憩できる椅子やテーブルがあり、自然を満喫しながらお弁当を食べたりしてゆっくりしている人がたくさんいました。
国の登録有形文化財笠石洞暗渠(あんきょ)は廃線の下にあるレンガ製の水路です。
鉄砲水など大量の雨水によって、線路やその周りの土が流れて破壊されないように9mもの落差をつけて一気に排水を川へ押し流します。
玉野古道から暗渠の中に入ることができますが、この時点で山道を1kmほど歩いていたため帰り道の娘の体力を考え、上からの写真しか撮れませんでした。
玉野古道跡とは、中央線開通以前に急な坂道を越える内津峠越えではなく、平坦な道で名古屋へ向かう名古屋新街道として1895年(明治28)に開通しました。
しかし翌年中央線のルートになってしまい、中央線の工事開始に伴い寸断され、1900年(明治33)中央線が開通し、玉野古道は役割を終えました。
5号トンネル:99m
カーブしていて先が見通せず中はかなり暗いです。
レンガ広場前駅
SLの貴婦人と呼ばれるC57蒸気機関車ですが、全国初の動く動輪が展示されています。
自転車に駆動装置を組み合わせ、自転車をこぐ力が動力となって動輪が回転します。
写真では見えませんが車輪の奥に自転車が設置されていて、自転車をこぐと動輪がゆっくり回転していました。
廃レンガ敷きのレンガ広場では、コンサートやバルーンのパフォーマンスが行われていました。
すれ違う子供達がバルーンを持っていて、娘もそれが欲しくて頑張って歩いてきたので、バルーンでクマを作ってもらって大喜びでした。
クマのおかげで帰り道も頑張って歩いてくれました。
6号トンネル:333m
トンネル入口に全国で唯一公開されているインバートがあります。写真の木の柵のところです。
インバートとはトンネルを掘った断面の地面の底を逆アーチ状に堀り、トンネル断面を円形にすることで強度を増し、圧力を分散させトンネルを変形させにくくする仕組みです。
トンネルはくの字に曲がっているため中は真っ暗。
足元は廃線路なので石が敷き詰められているため歩きにくく、スマホのライトを照らしながら歩いている人達もいました。
真っ暗で子供の手を離すと見失ってしまうので必死に手を握っていました。懐中電灯が必要だと思いました。
トンネルが長く、入口から奥の方へ進むと寒くなってきて、天気があまり良くない日は防寒具もあったほうがいいと思いました。
靴のつま先は敷石についたススで黒色の汚れがついていました。
県境駅
行き止まりです。この先の深見沢と言う谷が愛知県と岐阜県の県境です。
行政権の問題もありこの先以降にある愛岐トンネル群は眠ったままとなっています。
同じ道を引き返して途中の出口から出なければならなかったのですが、よく分からずに入口まで引き返してしまいました。
愛岐トンネル群のNPOのスタッフに知り合いがいたので、無事入口から出してもらえました。
たくさん歩いて疲れ、お腹も空いてしまったので、廃墟や紅葉、河原の絶景をみながら散策し、定光寺方面にある滝カフェ「薬膳茶 Soybean Flour at きらら」でお茶をしました。
以前車でカフェの前を通りかかった時は駅からそんなに離れていないと思っていましたが、15分ぐらいかかり、坂道が急勾配でした。
ロードバイクの激坂マニアに人気の坂道だそうです。娘にはすぐ着くよと言ったので、「だまされたぁぁぁ」とずっと道中言われ、なだめながらやっと到着。
ステキなカフェと散策についてはこちら。
まとめ
廃線路なので敷石が敷き詰められていて、天気が良くても運動靴でないと歩きづらいと思いました。
疲れてくると、足が取られるので、ハイキング用の靴があればなお良いと思います。
トンネル内はライトアップされているところもありますが、真っ暗で全く見えないところも多くあります。
特に最後の6号トンネルは真っ暗で、子供の手を離さないよう気を使いました。
懐中電灯などのライトがあると歩きやすいと思います。
往復2時間ぐらいかかるので、小さな子供にはいろいろキツイです。
年中の娘は体力も集中力もギリギリでした。
簡易トイレが道中に何ヶ所かあるので、トイレの心配はほとんどありません。
最終日だったせいもあるのでしょうが、最終入場時間の14時頃から片付けが始まりました。
散策だけでなくイベントも楽しみたい場合は早めの入場が良さそうです。
最終入場時間頃の入場は人がかなり少なくなっているので、美しい景色だけの写真を撮りたい人は人にとっては、写真撮影がしやすいと思います。
ここまで読んで興味がわいたならば、春の一般公開に来てみてはいかがでしょうか?
実際に歩いてみた方が興味深く、素晴らしさが分かると思います。
東山動植物園の紅葉もステキですよ。合掌造りの家があります。
名古屋近郊、岐阜県多治見の国宝がある永保寺の紅葉もステキですよ